「私、しあわせになりたいの」というセリフに集約された感動ノンフィクション『しあわせカモン』がとにかくスゴい!

「私、しあわせになりたいの」というセリフに集約された感動ノンフィクション『しあわせカモン』がとにかくスゴい!

 全国のお蔵入り映画ものが一同に集い陽の目を見る機会となった「お蔵出し映画祭」の第一回において見事栄えあるグランプリ作品に選ばれたのが本作「しあわせカモン」です。「しあわせカモン」というタイトルから殆どの人がヒューマンドラマ系のノホホンとした温かい感じのストーリーを想像してしまうかもしれませんが、本作は全く逆の壮絶なドラマを描いたストーリーとなっているのです。 映画のストーリーは岩手県出身のミュージシャンである松本哲也さんの実話をベースに作られたとのことですが、そのあまりの幸せからは遠すぎる人生に「しあわせカモンってタイトルは言葉通りの意味だったのか」と思い知らされます。

 麻薬中毒に陥った母親松本扶美江とその不遇な家庭環境で飛行を繰り返す息子松本哲也の姿をつづるヒューマンドラマなのですが、どのような境遇にもめげずに幸せを追い求め、また人一倍の深い愛を追い求める彼らの姿に感銘を覚えます。演出自体も本当に素晴らしく、お蔵入りのまま日の目を見ることが無かったらと思うと、胸が苦しく張り裂けそうな気持ちになります。

 このサイトでは、そんな本作の魅力と、他にも無数に存在する心を抉る映画作品について紹介いたします。

お蔵出し映画祭って何?

 「お蔵出し映画祭」とは日本映画で劇場公開されていない作品、または公開するメドが立っていない作品を対象として応募によって審査された映画祭です。年間で約400本以上の映画が作成されるものの公開されていない作品も多い日本において、ある意味救済としてあるような映画賞なのです。そして、本作品はその2011年に行われた第一回グランプリを受賞した作品なのです。

ストーリー

 舞台は1970年代の岩手県水沢市。「私、しあわせになりたいの」と少女の頃からそう願い続けてきた主役、扶美江は、その願いと相反して夜の世界で働くようになり、ヤクザである哲夫と結婚し、息子を授かった。彼を哲也と名づけて溺愛するものの、荒んだ生活の中で次第に覚せい剤に溺れていくようになったのだった。気づくと、彼女は麻薬中毒者として病院のベットの上にいたのだった。退院した後は、父の助言を得て哲也と共に、実家に戻ったのだが、禁断症状が出て再び入院。そして児童相談所の家権により、哲也は児童養護施設に引き取られ、小学校卒業まで母子は離ればなれの生活を送ることとなる。

そんな孤独の中で哲也は施設の職員が奏でていたアコースティックギターに心を奪われたのだった。一方扶美江は、夫から離婚届の用紙が届いたことによって、寂しさから断ち切っていた覚せい剤に再び手を伸ばしかけてしまう。しかし、そんななか勤務先のスナックの秀行という男に止められ、事なきを得た。秀行自身も過去に薬物中毒に苦しんだ過去の持ち主だったのだった。それからしばらく立って、ついには母子二人で幸せに暮らせる日々がやってきた。中古のギターを抱えて期待に旨をふくらませ扶美江のアパートを訪れる哲也だったが、そこには、新しい男、秀行の姿があった。毎晩派手な衣装で仕事に行くと、酔っぱらいになって帰ってくる彼女に幻滅した哲也は、非行に走り始め、ついには傷害事件を起こしてしまいます。

しかし、そんな時でも気丈に振る舞い続けた彼女に対して、哲也は辛辣にあたるのだった。再び離れ離れになった親子。哲也の事件によって多額の賠償金をしはらった扶美江は秀行と別れて、再び一人の生活に戻る。そんななか哲也は音楽教師である堀江という人物から特技のギターを褒められ、ミュージシャンになったことを再び夢見ることになった。

そして、中学卒業と同時に中華料理店に就職し、上京先で夢を追うことを決意する。季節が過ぎ、扶美江は孤独に苦しみながらも、東京で音楽に打ち込む哲也の手紙を心の支えにし、必死に生活を送っていた。親子の確執はゆっくりと評価石、そしていよいよ哲也自身もミュージシャンとしてプロデビューすることとなる。「もう少ししたらもっと売れるから」「母さんを幸せにするから」という彼の言葉に、幸せを感じる扶美江だったが、長年の薬物依存の弊害によって、彼女の体と心は少しずつ壊れ始めていたのだった。

本作品の魅力

 薬物依存患者である母を演じる鈴木砂羽の演技がとにかく凄いです。不幸な境遇、めちゃくちゃな状況にあっても明るく可愛く生きていく母の姿が、ダメな人であるにもかかわらず非常に魅力的で、モデルになった実際の人物を知る人からは『本当に本人とすごく似ている、そっくり!』と言われるなど、見事に役柄になりきっていました。そして、ストーリー自体もいいものでした。どんな環境になろうともめげないその姿に、勇気と力を頂きました。

キャスト

  • 松本扶美江《哲也の母》…鈴木砂羽
  • 松本哲也《現在》…石垣佑磨
  • 松本哲也《中学生時代》…高橋賢人
  • 松本哲也《子供時代》…高橋至恩
  • 高野医師《精神科医》…大和田伸也
  • スナック常連客・川村…丹波義隆
  • 堀江通代…沢田亜矢子
  • 松本哲夫《哲也の父》…今井雅之
  • 吉田先生《教護院担任》…浅野和之
  • 哲也の祖父…大石吾朗
  • 哲也の祖母…風祭ゆき
  • 同棲の男…三浦誠己
  • スナックのママ…安達有里
  • 看護婦…清心
  • 大洋学園の中村先生…松本哲也

スタッフ

  • 監督・脚本…中村大哉
  • 助監督…管公平
  • 製作総指揮…石田裕一郎
  • エグゼクティブプロデューサー…恩田真弓
  • プロデューサー…宮川健治、首藤行景
  • 撮影監督…山本圭昭
  • 美術…高橋俊秋
  • 制作担当…前橋浩一
  • 後援…岩手県
  • 協力…ジェイアール東日本企画
  • 製作…株式会社アルファコア

主題歌

  • 「ユキヤナギ」《松本哲也》